ハロウィン企画2。



ハロウィン企画小説です。
時間軸は本編の三カ月後ですが本編≠ハロウィン企画小説に為っています。
今後の本編のネタバレが多々あります。
なんでそうなってんの?っと疑問に思われる事があるかもしれません;疑問に感じた事は後々本編にて解決する予定です;
というか、ハロウィンあんまり関係ないんじゃね?って内容ですw
本編からすると違和感がある人が数名いる気がします。




     苦手な方は逃げましょう(TOPへ)。       大丈夫だと言う方はスクロール又はここをクリック。















































ハロウィンデート。



 十月三十一日の朝いつもの食堂で朝食を食べ終わると、今日は休日の為のんびりと雑談をする。新聞を読んでいた真琴がテーブルに新聞を広げる。
「これ見て。今日暇だって言ってたよね。これ行かない?」
 麗華は新聞の広告を見る。そこに載っていたのはハロウィン企画を遣っている遊園地の広告。カボチャやコウモリの可愛らしいイラストが描かれてあり、面白そうなイベントも幾つかある。
「良いですね! 遊園地なんて、凄く久しぶりだし、イベントも楽しそうですね」
「だろ。ほら、これでお得に行けるし」
 真琴は、広告の『今ならお得!』と書かれている場所を指差した。
「カップル割引ですか?」
 ハロウィンに関するものを身に着けるカップルは二千円割引と書かれている。
「俺と麗華、二人で行けばお得だ」
 にっこりと良い考えだろ、と綺麗に微笑む真琴に不服を訴えたのは傍に居た他の面々。
「なんで、真琴さんと麗華二人で行くのさ」
「そうだよ。真琴さんと行くぐらいなら、俺と行こうよ。それに真琴さんと麗華さん二人で行ったら、女の子同士に間違えられるかもしれないですよ」
 真司の不服そうな声に優斗が続く。そこらの女性よりも綺麗な顔立ちの真琴は、髪を短くしても黙っていれば女性に見える美しさがある。
「もし、間違えられたらそこの辺はちゃーんと違うって訂正するから、心配無用だ。男と女のカップルがする事をバチっと見せつけるさ」
 ふふ、っと笑う真琴に、麗華は少し不安になる。
「なら、余計に二人では行かせられないな」
「そうだよ。真琴と二人じゃ危険じゃんか」
 蓮と大輝も参戦して、五人で言い合いを始める。麗華はまたかと、軽くため息をついて隣に居る彰華に目を遣る。

「彰華君達は行くの?」
 新聞の広告を奪い取って、今日の計画を立て始めている守護家女性陣を見る。
「年に一度だからな。少しぐらい楽しんでも良いだろう」
「そうだよね。じゃあ。皆で行こう!」


 麗華の一言により、麗華と彰華と守護家の皆で遊園地に行く事になった。カップル割引を利かせる為に丁度良く男女同じ人数で中に入る。喧嘩に為らない様に各守護家と麗華と彰華に分かれて中に入った。大人数では遊園地内を回りづらいと言う事で、中に入ると彰華と守護家女性陣は別行動となる。

 麗華は遊園地内の各地に設置されているスタンプラリーしようと思う。入場する際にスタンプ帳を貰っていた。五つのスタンプを集めるとカボチャのランタンが貰える。折角なので五つ揃えて麗華たちの住んでいる白華館に飾ろうと話していた。
 最初のスタンプはジェットコースターに乗るとスタンプが押せる。三回転回るジェットコースターを麗華は見上げて、ドキドキしてくる。前に遊園地に来た時はまだ小さかったので、ジェットコースターに乗った事がなかった。
「麗華はこういうの得意なの?」
 真司が隣に並んで一緒に三回転回っているコースターを見上げる。上から悲鳴が聞こえて、段々不安に為って来る。
「わかんない。多分、大丈夫だと……。真司は平気?」
「余裕」
 他の人も平気な様だ。
「乗り物酔いとかする方?」
「バスの長距離は酔うけど、多分大丈夫」
 麗華達の乗る順番に為る。隣に真司が座り安全装置が下ろされる。遊園地のスタッフのさわやかな笑顔と共に見送られて、コースターは動き始める。

「ど、ど、どうしよう。マジで恐くない?」
 ガダガダと音を上げながら徐々に上に登って行くうちに不安に為って来る。
「景色楽しめばいいよ」
 麗華は真司に言われて景色を見ようと試みた。確かに秋晴れの良い景色だけれど、ここから一気に落ちると思うと恐さが倍増する。
 安全装置を強く握って。無事に地上に戻れる事を祈る。
 真司に横から肩をぽんぽんと叩かれる。
「隣で叫ばれるとうるさいから、叫ばないでね」
 笑って言われて余計に恐くなる。この状況で落ちると言うのに、叫ぶなとは鬼だ。
「それ、無理だと、思うよ」
「そんなのやってみないとわからないじゃん」
「私なら、叫ぶよ。と言うか、こういうのって叫んで楽しむんじゃないの?」
「どうしても叫ぶ?」
「さ、けぶと思う」
 頂上付近に近付いてきて、振動がドクドクと音を立てて、緊張が高まって来る。
「じゃぁ、叫んでもいいけどさ、その代わり――」
「ぎゃーーーー!!!」
 真司が何か言っているけれど、コースターは急下降と加速して三回転する。麗華の絶叫で真司の言葉はかき消された。

 ジェットコースターから降りると体力を根こそぎ奪われた様な、ふらふらとした感覚になる。生きて帰れた、安堵もあるけれど早くどこかに座りたい気持ちになる。真司がさりげなく出した手を受け取り、階段を下りて行く。自分がジェットコースター系を苦手だと初めて知った。本当に生きた心地がしなかった。
 階段の手すりと真司の手を掴みながら、降りて行くと不意に真司が止まり麗華を見た。
「気分はどう?」
「あんまり……」
「そっか。それはよかった」
 それの何処が良いことなのか。
麗華が少しむっとすると、真司の顔が急に近付き麗華の唇に軽く口を落とし離れた。一瞬でしか触れていないのに、真司の唇の感覚が残っている。なんで、キスされたのか顔を赤く染めて驚いていると、具合が悪かったのが少し良くなっている事に気が付いた。真司の力を少し分けて貰った様だ。
「叫んだら、降りてから口ふさぐって言ったじゃん」
 軽く笑う真司に、麗華は聞いていない!っと叫んだ。



 次は鏡の迷路だ。中にハロウィンにちなんで鏡の前にカボチャや上からはコウモリが吊るされていた。五人バラバラに入り誰が最初に抜け出せるか、競争する事になった。麗華の知らないところで、男どもは最初に抜けた人が観覧車に麗華と二人だけで乗れる権利が与えられると決めていた。
 そんなやり取りを知らない麗華は、皆の遣る気に負けない様に気合を入れる。

 バラバラに入り、麗華は手を前に遣りながらぐるぐると鏡の迷路を回る。時に自分の大きくなったり小さくなったり移る姿に驚きながら進むと、人にぶつかった。お互いに謝る。そこで、聞き覚えのある声だと、顔を上げると優斗が居た。
「優斗君だったんだ。ごめんね」
「こっちこそ、大丈夫?」
「うん平気だよ。それにしても、迷うね。どっから入ってきたのかも分からなくなったよ」
「そうだね。俺がこっちから来たって事は、そっちの道が抜けられるんじゃないかな」
「えー。でも、こっちも出口じゃなかったよ」
 完全に迷子状態の麗華と優斗。二人して、こっちじゃないかと指差す方向は逆方向。
「俺達。完全に迷ってるね」
 苦笑いする優斗に麗華も苦笑いで返す。
「そうみたい。もう五分は居るからきっと皆抜け出してるね。ここは、協力してゴール目指さない?」
「そうしようか」
 麗華と優斗は二人で鏡の迷路を歩く事にした。くるくると迷いながら、歩く。
「ねぇ、麗華さん」
「ん?」
「さっき、真司とキスしてた?」
 麗華は盛大に咳き込む。一瞬だったので誰も見て居ないと思っていた。でも優斗には見られていたようだ。
「み、見えちゃった? や、でもあれは、ちょっとした。うん、深い意味はないし、軽くだから。外国で言う挨拶の様なものよ。うん」
「動揺しすぎだよ」
 優斗が軽く笑う。
「でも、真司の悪ふざけだよ。うん」
「じゃあ、俺が悪ふざけしても怒らない?」
 優斗が軽く麗華の頬を触る。目を瞬かせて麗華は驚く。
「怒るよ。それは。と言うか、真司にも怒ったよ」
「でも、真司だけずるいな。外国で言う挨拶の様なキスならいい?」
「だめ。というか、ほら、早く迷路抜けようよ。皆待ってるよ」
 麗華は足を速めて歩くと、突き当たりに出た。仕方なく引き返そうとすると、優斗軽く笑って立っている。ハッと嫌な予感がする。さりげなく突き当たりに導かれたんじゃないだろうか。優斗が本気で迷路を抜け出そうとしたなら、とっくに抜け出しているはずだ。
 もしかして、はめられた?
「別に、そんなに怯えなくても、酷い事はしないよ」
「じゃあ、なにするの」
 優斗に鏡際に追いつめられる。鏡に手をつかれて、逃げ場を失う。横を見ると鏡に、狼に追いつめられた兎のように自分達の姿が映っていて、顔に熱がこもる。
 優斗の手が麗華の頬を滑り、顎を付かむ。それから瞼に軽く唇を落として、頭にキスをする。
「ただ、麗華さんに少し触れたかっただけ」
 少し麗華に触れられて優斗は満足で、頬をバラ色に染めたのは自分だと思うだけで幸せだ。名残惜しそうに麗華から手を離して、優斗は軽く微笑んだ。




 迷路を抜け出した後昼食をとる事にした。
 昼食はハロウィン企画のパンプキンパイの早食い競争。麗華が出ると張り切って、真琴達はじゃんけんの末、大輝が負けて出る事になった。
 会場の裏で麗華は大輝と二人で出番を待つ。
「大輝君は、早食い得意?」
「得意じゃねぇ。出来れば出たくなかった」
「あぁ。じゃんけんに負けた時、叫んでたもんね」
 大輝がじゃんけんに負けて叫んでいた様子を思いだして軽く笑う。
「そういう、麗華はどうなんだよ」
「私は、あんまり。食べるならゆっくり味わいたい方かな」
「じゃあ、何で出ようと思ったんだよ」
「一度、早食い競争に出てみたかったんだよ。たらふく、パイを食べれるなんて楽しそうじゃん」
「喉詰まらせて、死ぬなよ」
 大輝が意地悪そうに笑う。
「う。やりそう。気を付けるよ。大輝君もね」 
「おう」
 麗華達の出番になり、二人は壇上に上がる。十人ほどで一斉パイを食べ始める。途中を詰まらせて本当に死にそうになりながら、食べた。麗華が食べたパイは一枚と半分。大輝は五枚。優勝者は十三枚食べていた。
 麗華達は早食い競争に完敗した。食べ過ぎで気持ち悪くなりながら、皆の居る場所に戻った。



 麗華達はお化け屋敷の前に立つ。ハロウィン仕様のお化け屋敷。棺桶や包帯男、吸血鬼やカボチャのお化け。
「これは、やめようか」
 麗華は、一人頷いて引き返そうとする。
「ちょっと、スタンプ全部集めるってはりきってたのは何処の誰さ」
「私だけど……。でも、態々恐い思いする必要ないと思わない? だからこれは良いよ。カボチャのランタンは欲しいけどスタンプ四つでも飴が貰えるよ。十分じゃん」
「もしかして、麗華さん恐いの?」
「恐くない。恐くないよ。全然。ただ。こういうのは嫌いなの」
「へー。意外。ずかずか行くかと思ってた」
「人には得手不得手があるの」
「よし。じゃあ。尚更行かなきゃな」
 真琴は麗華を見て微笑む。
「何でですか。それなら。真琴さん行ってきてくださいよ。私待ってますから。ハイ、スタンプ帳」
「だめ」
 真琴は麗華の腕に手を回してお化け屋敷の入り繰りに向かって歩き始める。麗華は必死に嫌がると、不憫に思った大輝が声をかける。
「そこまで嫌なら行かなくてもいいんじゃね?」
「何、バカなこと言ってんだ。キャっとか言いながら、麗華が抱きついてくるのを楽しまないでどうする!」
「何言ってんですか! しませんよ! そんな可愛らしい反応期待しないでくださいよ!」
「大丈夫、大丈夫。すぐ隣に付いてるから、抱きつきたくなったら何時でもどうぞ」
 笑顔の真琴。
「真琴さん、絶対面白がってるでしょ!」
「もちろん。人の嫌がる姿って楽しいよな」
 あはは。と笑う真琴に、無理矢理お化け屋敷の中に詰め込まれた。
 暗い中、びくびくしながら歩く。急に出てくるお化けに驚いて叫んで走って、転ぶと、まわりに人が居なくなっていた。必ず、誰かは居るはずなのに気配がない。
 一本道だから、待っていれば来るはずだが、赤い照明でコウモリの声とか女の泣き声が聞こえてくる、気味が悪い場所に止まるのは恐かった。
 隣にいると言ってた真琴も来ない。まさか、皆で恐がらせて遊んでいるのだろうか。何度も声をかけてみるが、誰も来ない。
 仕方なく、一人で前を進む事にした。ゆっくり慎重に前を進む。角を曲がれば何か出てくるはずだと、頭の中で予想を立てて歩く。
「おい」
 後ろから声が聞こえて叫んで飛び上がった。
「落ち着け。俺だ」
 後ろに居たのは、蓮だった。眼鏡を軽く触って、麗華に会えた事を安堵している様子だ。
「蓮さん。何処行ってたんですか。びっくりするじゃないですか」
「走りだしたのはお前だ」
「あれ、ちょっとの間に、怪我しました?」
 真新しい傷が手にある。
「……少しな」
 本当は、麗華が走った後、誰が麗華の隣を歩くかで揉めた。軽く乱闘になって、蓮が先に抜け出してきたのだ。
「他の皆は?」
「後から来る。それより、先に抜けたいだろ?」
「はい! それはもう。ここから早く行きたいです」
「なら、前に行こう。他の奴らは心配しなくても大丈夫だろう」
「そうですね」
 麗華は、早くここから抜けたい一心だ。蓮と二人で歩く事にした。途中出てきたお化けに驚いて、蓮の腕を掴む。冷静になって慌てて蓮の腕を離した。
「ご。ごめんなさい」
「いや、いい。恐いならそのまま掴んでいても構わないが?」
「いいんで、ひゃっ!」
 話している途中でも現れるお化けに吃驚して蓮の腕を掴む。麗華はこんなに作りモノもお化けに吃驚していると思われると恥ずかしくなる。それでも、恐いモノは恐くて、何度も蓮の腕にしがみつく事になった。
「しがみついて服が伸びちゃってませんか?」
「そんな事気にしなくても、平気だ」
 さぞ呆れられているだろうと思い蓮の様子を窺うと軽く笑って麗華の頭を軽く撫でた。
 こうして、麗華から縋って来る事は珍しい。この貴重な体験を自分だけしていると思うとえも言われぬ優越感があった。




 遊園地の締めと言えば観覧車だ。辺りが暗くなり始めて、ライトアップされた遊園地を上から見たら綺麗だろう。
「六人乗りだから、ピッタリだね」
 麗華は乗れる人数を確認して、丁度いいと思う。
「実は最後は二人ずつ乗ろうと思って、先に人数決めてたんだよ」
「そうなの?」
 二人ずつなら、男同士で乗る人が出るが楽しいのだろうか? と少し疑問に思う。
「そう。麗華と乗るのは俺。さぁ、順番も来たし、乗ろうか」
 真琴が麗華を観覧車の中に誘導する。扉が閉められて、観覧車は上に向かう。
「観覧車って、乗ると不安になったりしません?」
「そうか? 密室だから?」
「なんか、このまま動かなくなったらどうしようとか、倒れたりしないのかなっとか」
「たまにニュースとかで見るもんな」
「ですよね。あれ見ると恐くなりますよ」
「でも、大丈夫。もしも何かあっても、俺が居るから脱出は出来る」
「そうですね。真琴さんが居れば心強いですね」
 なんだかんだ言っても、真琴は頼りになる。観覧車が故障するなんて、無用な心配だ。
 観覧車が頂上付近に近付き、景色を見る。きらきらと照明が輝いていて綺麗だ。
 麗華は小さくくしゃみをする。夜に為り寒くなってきた。真琴は自分のしていた、マフラーを麗華に付ける。
「あ、良いですよ。大丈夫です」
「いいから、風邪ひいたら大変だろ」
「それは、真琴さんも同じじゃ」
「俺は頑丈に出来てるから大丈夫」
 ほわっと温かいマフラー。首元が温かくなるだけでだいぶ違う。
「それじゃあ。お言葉に甘えて。有難う御座います」
「いいえ。風邪引かないでね」
 というと、今度は真琴がくしゃみをした。今まであったマフラーが無くなり体が冷えたようだ。麗華は真琴にマフラーを返そうとするが、真琴は受け取らない。
「それじゃあ、観覧車地上につくまで隣に行って温まって良いかな?」
「あ、そうですね。隣の方が暖かいですよね」
 真琴が移動してきて、麗華の隣に座る。座ると麗華の体に抱きついた。
「え。ま、真琴さん?」
 抱きつかれて驚く麗華に、真琴は何食わぬ顔で微笑む。
「麗華は暖かくていいな。寒くなったら一緒に寝たいぐらいだ」
「そ、それはちょっと」
「冗談だよ。でもこうしてると体が暖まる。ずっとこうして居たいな」
 麗華も真琴の体温を暖かく感じるが、さすがにこの体制は恥ずかしい。行き場のない手が、宙に浮かんだまま途方に暮れて居る。
「あ、そうだ。麗華」
 真琴は手を離してポケットから、お化けカボチャの入った小さな花束が現れた。飴やクッキーらしき包みも可愛らしく飾られている。ポケットの何処に入っていたのだろうと不思議に思う。
 花束を麗華に差し出して、真琴は綺麗に微笑む。

「HAPPY !  HALLOWEEN!」




top≫ ≪menu

2010.10.31

inserted by FC2 system