ハロウィン企画小説。


注意点 この話はハロウィン企画として書いたものです。
     時間軸は現在の本編より三ヶ月後になります。今後の本編のネタバレがあります。
     本編の三ヶ月後の話ですが、本編≠ハロウィン企画になります。
     (まだ、書いている途中なので、本当にこんな風に為るか分からないからです)
     性格変わったの? って人が数人居る様な気がします…。本編にまだ出てきていない人も出ます。

 


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番外編 ハロウィンパーティー




 十月に入りがハロウィンの飾りが街角で売られるようなった。街で飾りを見た麗華は華白館に帰ると、館の管理を任されている怜(りょう)が大学から帰ってきたころを見計らい、キッチンに向かう。夕食の支度をしていた怜と祥子(しょうこ)に先ほどフエルトで作ったカボチャやコウモリの飾りを広げて見せる。

「怜さん、華白館をハロウィンの飾りでいっぱいにしても良いですか? で、31日にハロウィンパーティーをやりましょう!」
 怜はフエルトのカボチャを受け取り、柔らかく笑う。
「可愛らしいですね。ハロウィンパーティーですか、分かりました。私の方でもハロウィンの飾りを用意いたしましょう」
「ホント〜可愛いですね〜。麗華ちゃんの手作り?」
「はい」
「ハロウィンパーティーってあれですよね。セクシーな仮装を着て騒ぐ日ですよね? で、お菓子くれなきゃ、えっちな悪戯しちゃうぞって」
 祥子がコウモリの飾りを口元に当てて、投げキッスの様な仕草をしてウインクする。麗華は顔を赤くしてコウモリを引っ手繰る。
「な、何言ってんですか。違いますよ。どっからの情報ですかそれ!?」
「え〜。去年のテレビでアメリカの中継先からそう言ってましたよ。ど〜せ、アメリカの真似してハロウィンパーティーしたいって言ってるんだから、向こうの流儀道理にやるのが当然でしょ」
「確かに、近年のアメリカでは仮装の系統が変わってきていると聞いた事があります。ですがTrick or Treatの解釈が違いますよ、祥子」
「でも〜。そっちの方が楽しいもん。私が」
「祥子さんを楽しませたくてやるわけじゃないですよ」
「私だけじゃなくても、他の人も楽しいと思いますよ。でもそうしたら、お菓子を用意する野郎はいないと思いますけど〜。ハロウィンパーティーの企画は私に任せてくださいね。ぜった〜い楽しいモノにしますから」
 ふふふと笑う、祥子に怜は頭を軽く押さえる。妹の祥子が計画を立てるとおかしなことになるのを経験上嫌と言うほど知っていた。
「祥子、余計なことはしないで、大人しくしていなさい。麗華さん、ハロウィンの飾りは用意致しますので、企画はそちらで好きに決めてください。料理の事はのちほど相談しましょう」




 翌日には華白館がハロウィンの飾りで埋め尽くされていく。窓にはカボチャやコウモリやおどけた幽霊のジェルジェムが貼られ、天井からは飾りがつるされ、テーブルクロスもハロウィン用の模様替えした。

 リビングで麗華と真琴がかぼちゃのランタンを作っていた。麗華はちょうちん用のカボチャの中身をスプーンでくり抜く。予想以上に柔らかいが、大きい為くり抜くのに苦労する。
 隣でくり抜いたカボチャを器用にナイフで穴を開けて顔を作っている真琴に視線を向ける。
「ん? どうした?」
 麗華の視線に気が付き軽く笑う。
「いえ、器用だなって思って」
 持っていたナイフをくるくると指で回す。
「指先は昔から器用でね、テクニックは一流なんだ」
 麗華は感心して拍手する。
「凄いですね!」
「ナイフ以外でも器用だよ。試してみるか?」
 ナイフをかぼちゃに刺して、麗華がスプーンを持っていた手を掴む。
「くり抜くのにもテクニックがいるんですか?」
「いいや、他の事でテクニックを教えてあげようと思って。麗華は楽にしてればいいよ」
 スプーンを取り上げて床に置くと、指を絡めて軽く指にキスを落とす。
「ま、真琴さん?」
 もう片方の手は頬をかすめて首をやさしく撫で背中に回る。
「あ、あの?」
 くいっと指を絡めたままの手を引かれると、自然に麗華は床に横になった。いまいち状況が理解できない麗華は、混乱して目を丸くさせて真琴を見る。
「楽にしてれば、最高に気持ちいいから。緊張しないで、リラックス……して」
 耳元で優しく囁く真琴に、麗華は焦る。魅惑的に微笑む真琴が何を考えているのか、嫌な予想が付いてしまった。
「真琴さん! ちょっと待ってください。ほ、ほら、かぼちゃのランタン作りかけですし、早く続きをしましょう。ね」
「緊張してるの? 大丈夫、俺上手いから、すぐ気持ち良くなるって」
 焦っている麗華を見て、楽しむように笑う。身体を固くしている麗華の頬を軽く撫で額に唇を落とし、顔を赤くしている麗華にふれられている事を幸せに思う。
「あ、あ、あ、の! で、ですから……」
 拒絶しようとして手を動かす麗華を強制的にうつ伏せに返して、麗華の上に跨った。
 そして、マッサージを始める。腰から始まり背中を重点的に押されて、いつもの疲労が嘘のように抜けて行くのを感じ麗華は気持よくて唸り声を出す。

「ま、マッサージの事を言っていたんですね……」
「何だと思ったの?」
 上からくすくすと面白がっている笑い声が聞こえて、麗華は恥ずかしくなり顔を伏せた。




 麗華は自分が作ったハロウィンの飾りを階段に施していく。階段の手すりにマスコットを付けていると、下から声がして下を覗く。
「またずいぶん凝ったものを、作ったな」
 下の階の飾りを触りながら、本を数冊持った蓮が言う。
「あ、蓮さん。ハロウィンパーティーをやるのは初めてなので気合が入りました」
 にっこり笑う麗華に、蓮は眼鏡を軽くさわった。
「お前が来てから、華白館も随分賑やかになったものだ」
「賑やかの方が楽しいですよ。……もしかして、騒がしすぎます?」
 確かに色々な騒動を起こしてる原因は麗華にあった。今までの事を考えてみても、蓮たちに迷惑をかけているのは明らかだ。真琴などは麗華が起こす騒動も楽しんでくれているようだが、静かな所を好む蓮には鬱陶しく迷惑なモノだったかもしれない。恐る恐る聞いてみると、蓮は眼鏡を軽く元の位置に正す。
「手伝おう」
「え? いいんですか?」
 本を持っていると言う事は、読書や勉強をする予定だったのではないだろうか。蓮は持っていた本を適当な場所において、階段を上がって来た。
「あぁ、これを付けて行けばいいのだろ」
 蓮が飾りの入った箱からコウモリを手に取る。手伝ってくれると言うのだから、蓮に感謝してやってもらおうと決める。
「はい。じゃあ、そのコウモリを手すりに付けるのを、お願いします。そのコウモリの後ろに紐がついてて、柱の空いてる所に結んで付ければOKです」
 蓮は麗華の説明を聞いてコウモリの後ろに付いている紐を柱に縛るが、上手く結べない。リボン結びで苦戦している蓮がなんだか、かわいく思え少し笑ってしまう。麗華の笑い声を聞いて、蓮が軽く麗華を睨む。麗華は軽く咳払いをして、蓮の傍に行き手を伸ばす。
「えっと、ですね。リボン結びはこうするんですよ、ね。出来た」
 蓮の居る一つ上の階段から結び、出来上がると麗華は笑って顔を上げた。蓮の顔が予想以上に近かった事と、蓮がいつの間にか麗華の髪をひと房掴み唇を落としているのに驚いた。何か言葉を発しようと思うが動揺のあまり階段から足を滑らせる。
 階段を転げ落ちる衝撃を予想して、目をつぶるが痛みは感じない。かわりに強く抱きしめられている、腕の温かさを感じで顔を上げた。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。ありがとう」
 無意識に握っていた蓮の腕を麗華は、ドジな自分を恥じて赤面させながら離した。蓮は軽く麗華を抱きしめて頭の上に唇を落とす。
「麗華に危険がある騒動は嫌だが、こういう騒動は嫌いではない」
 顔を上げて目を丸くしている麗華を蓮は名残惜しそうに離して微笑する。



 ついにハロウィンパーティー当日がやって来た。
 本を見ながらハロウィンパーティーのデザートを作る。いつも料理を作っている岩本家の二人はパーティ会場の準備していのでキッチンには居ない。料理をするのは久しぶりで鼻歌を歌いながら楽しみながら作る。ハロウィンらしい色々な形のパンプキンクッキーをトレイに並べ、綺麗に出来た事を喜ぶ。
 ひょいと、横から出て来て、一番目立っていたカボチャに猫が乗ったクッキーを掴む。
「へー。上手く出来てるじゃん」
「あ、大輝君。でしょ、でしょ。すごく可愛く出来たって自分でも思う。その、猫を上に乗せるのが細かくて苦労したんだけど、力作だよ」
 パリっと良い音を立てて、クッキーを頬張る大輝に、麗華は驚いてクッキーを掴んでいる手を軽く何度も叩く。
「何で食べてるのよ! パーティ用に作ったクッキーの目玉なんだよ」
「いいじゃん、別に。後で食べるなら同じだろ」
 麗華の攻撃を避けながら、クッキーを食べる。
「同じじゃない。どうして、パーティーまで待てないのよ」
「そんなむくれんなよ」
 そう言って麗華の隙を見て、別のクッキーに手を出して食べる。麗華は大輝の手の速さに腹を立てて、クッキーのトレイを持ち上げて大輝から遠ざけた。
「腹空いてるんだし、もう少しぐらいいいだろ」
「駄目」
「ケチ」
「ケチで結構。これ以上食べたらみんなの分が無くなっちゃうじゃない」
「じゃあ、また作れば良いじゃん」
「今、ケーキ焼いてる途中だからオーブン使えないし、作ればいいって問題じゃないでしょ」
「じゃあ、後一個だけ」
 麗華に近づいてくる大輝からクッキーを守るべくトレイを頭の上に上げて逃げる。逃げる麗華の腰に手を回して動きを封じ、密着した形から手を伸ばしてトレイの上のクッキーを掴む。
「あ、こら!」
「なんだよ。良いだろ」
「駄目って言ってるのに。っていうか、近すぎ。手を離してよ」
 トレイを両手で持っている麗華は大輝から逃げようと、もがくが大輝は肩手を腰にまわしたままで離そうとしない。身長差があまりない麗華と大輝はお互いの瞳に自分が映る。焦ってる顔の自分が見える麗華は、自分の顔が見えると余計に恥ずかしく顔が赤く為る。視線をそらして、逃げようとまたもがく。
「じゃあさ」
「んっ!」
 麗華の顔、無理矢理正面に向かせるとクッキーをくわえた口を麗華に向け強引にクッキーを口の中に入れる。互いの口が付く前にクッキーが折れた。
「麗華も食ったから、共犯者ってことで」
 にかっと笑う大輝に、口の中に入ったクッキーを噛めずに顔を赤くする麗華は動揺のあまりクッキーのトレイを自分の頭の上に落した。




 祥子が仮装用の衣装を用意してくれると言うので、彼女に任せたのだがそれが大きな間違いだった。部屋に届けられた衣装を広げて、麗華は大きくため息をつく。確かに、魔女の衣装で良いと言った。黒のワンピースでマントにとんがり帽子でいいと言った。
 でもこんな短いスカートで胸が大きく開いた魔女の衣装を頼んだ覚えはない。それに魔女の衣装かどうかも怪しい、ただの黒いセクシーなドレスだ。頼んだマントはしっかり長い物だ。この辺は、マントがひらひらするのがかっこいい! と力説し合う仲なだけあると思う。
 ワンピースの下にレギンスを履き、上はマントで隠せば良いだろうと諦めて衣装を着る。鏡の前に立って、ワンピースを着た自分を見る。胸元が開いたワンピースなのに胸元が少しさびしい気がして少しへこむ。
 ノックの音が聞こえて、麗華は焦る。
「ねぇ、祥子が用意した仮装、本当に着たくないんだよね。別のでもいいでしょ?」
 麗華が返答する前に戸を開けて、真司が入ってくる。まだレギンスも着ていないし、マントも付けていない。焦って、下のスカートを手で伸ばしてみる。
「ちょ、ちょっとまって!」
 言うのが遅くなり、目の前には真司が立っていた。手には祥子が用意したと思われる白い服を持った真司は、麗華の姿を見て固まる。それから下から上に軽く目を流す。
「それ、麗華が着る衣装? 魔女って言ってなかった? 娼婦に変えたの?」
「違うわよ!?」
「乳首が見えてる」
 前かがみに為っていた為、胸元が大きく開いた衣装の間から胸が見えてしまったようだ。慌てて身体の体制を直して、胸元を隠す。
「今度はパンツが見えた」
 スカートと胸元を押さえて赤面する麗華を、真司は鼻で笑う。
「犯してくださいって言われてるようだね」
「言ってない! ていうか、見るからに着替え中なんだから普通後ろ向くとか、出てくとかするでしょ!」
 怒る麗華を真司は無視し口元を片方上げて笑って近づいてくる。身の危険を感じた麗華は、真司が近づくたびに後ろに下がる。
「麗華がしたいって言い出したハロウィンパーティー。その為に自分の身をごちそうとして、差し出してくれるっていう麗華に敬意を表さなきゃね」
「差し出す気なんてないから! 敬意を表するっていうなら、今すぐ黙って、部屋から出て行って!」
 壁際まで追いやられて、顔を青くする麗華の胸を隠している方の手を掴んで広げる。麗華はスカートを押さえていた手で真司の身体を離そうと押すがびくともしない。
「真司、手を離して」
「嫌だね」
 真司は麗華のもう片方の手も掴み壁に両手を押しつける。真司が持っていた白い衣装が腕からすり抜けて床に落ちた。麗華の細い腕が抵抗しようともがくが強い力で押さえつけられていて外れない。
「こんな服着て誘う麗華が悪いんだよ」
 薄く笑って胸元に唇を落とし舌が胸や首を這う。麗華は身体が反応して震える様な感覚を、声を殺して耐える。チクリとする痛みに思わず声が出ると、真司はゆっくり手を離した。麗華は力なくその場に崩れるように座り込む。
 ふわりとかけられた服に驚いて、身体を強張らせ警戒した顔を上げると、少し悲しそうな顔をした真司と目が合った。
「まわされなくなかったら、その服やめなよ」
 真司はそういうと、麗華の部屋を出て行った。残された麗華は、真司にかけられた服を握って静かに息を吐いた。




「Trick or Treat! お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ!」
 お菓子箱を持ちとんがり帽子をかぶり、足元まである長い黒のワンピースにマントを着た麗華は、優斗の部屋にノックをしないで開けて入る。本格的なパーティーの前に麗華が各部屋をまわってお菓子を集める事に為っていた。
 勉強机に座っている優斗を発見すると、またTrick or Treatと繰り返す。優斗は麗華を見て笑う。
「可愛らしい魔女さん。俺、お菓子買ってくるの忘れちゃった。だから持ってないんだ」
「えー。一週間前からお菓子用意してって頼んでたのに」
 麗華は優斗を非難する目で見る。
「ごめんね。ここの最近、勉強や仕事に追われてて、うっかりしてたよ」
 手を合わせて謝る優斗に、麗華は優斗に大量の仕事の依頼が来ているのを知っていたので、仕方がないと諦める。
「仕方がないな。優斗君は特別に、免除しましょう。でも来年やる時忘れてたら本当に怒るからね」
「わかった。来年やる時はちゃんと用意するよ」
 諦めて、とぼとぼ部屋から出ようとする麗華を優斗は呼びとめる。
「麗華さん、Trick or Treatなんだろ。お菓子持ってないんだから悪戯していかないの?」
 笑っている優斗を見て、わざとお菓子を買って来なかったと気が付き、麗華は呆れる。優斗がそんなに悪戯してほしいと望んでいたとは知らなかった。
「そうね。……じゃあ、優斗君目を閉じて」
 優斗は麗華に従って目を閉じる。
「ちょっと部屋を出るけど、絶対、良いって言うまで目を開けちゃだめだよ」
優斗の両肩に手を置いて耳元でと小さく囁く。優斗が頷き肩から手を離して、一度優斗の部屋を出た。戻って来た麗華、再度優斗に目をつぶっているか確認する。
 そして、麗華の持ってきたモノと部屋に掛っていた優斗が着るはずの仮装衣装を取り換えた。

「じゃあ、パーティー会場に仮装してちゃんときてよ、私が部屋の扉を閉めたら目開けていいから」
 
 麗華が部屋を出た後自分の着る衣装が黒いミニスカートのワンピースに変わっているのを見て、優斗は大きなため息をつく。予想していた悪戯とは全然ちがった。祥子の言葉を信じて、お菓子を用意しないでいた自分が馬鹿だったと、またため息をついた。



 ハロウィンパーティーは成功して麗華の記憶に残る楽しい思い出となった。




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2009.10.31

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